第3回公判 2024/2/21(水)10:00~ 青森地方裁判所 第1法廷

第2回公判に引き続き殺人未遂に関する証拠確認

午前 傍聴席 13名(うち記者3名)

 海中に転落した軽トラックは、転落前からブレーキの効きが悪いと運転していた被告が言っていた。海中から回収した軽トラックは右後輪のブレーキホースが破断しており、ブレーキが効かない状態であった可能性があり、ダイハツの専門家や、車体の構造等の専門家の証言から、ブレーキの破断状況とその影響が次のように明らかになった。

 転落した軽トラックの右後輪ブレーキホースは切断されており、後輪のブレーキは効かなかった可能性が高いが、前輪のブレーキは後輪のブレーキと独立して動く構造のため、前輪ブレーキには問題なく作動したはずである。自動車は前輪ブレーキの制動力が後輪ブレーキに比べて2倍程度に作られており、後輪ブレーキが効かない状態でも多少の制動距離の延長はあるが前輪ブレーキのみで停止することはできる。ブレーキホースの破断面からみて人為的に鋭利な刃物で切断された可能性が高いとされた。

 軽トラックは、ダイハツ ハイゼット H13登録、黒色、4WD、マニュアル車で前輪は

ディスクブレーキ、後輪はドラムブレーキとなっている。前輪のブレーキと後輪のブレーキは共に油圧式で、ブレーキホースが破断した場合オイルの圧力が伝達されなくなり、ブレーキは作動しなくなる。また、油圧系統は前輪と後輪はそれぞれ独立しており、後輪のブレーキホースが破断した場合は後輪のブレーキは働かなくなるが、前輪のブレーキは動作する。

 前輪、後輪それぞれの車を止めるための効果の割合は、荷台に何も積んでいないことを考慮して前輪7割、後輪3割程度と考えられる。

 海中に転落後引き揚げられた軽トラックの右後輪ブレーキホースはホースに対して直角に破断していた。また同じ右後輪サイドブレーキワイヤーにも切れ込みがあったが、内部は鉄製のワイヤーであったため、外側の樹脂部分のみの傷があり、破断にはいたっていなかった。

午前 証人尋問概要 ダイハツ関連の技術者

ブレーキホースの破断について

 経年劣化の場合は、表面のゴムにヒビワレが見えるが、該当するホース(写真)にはヒビワレは見られないので劣化は認められない。ブレーキホースは車体裏面の地面から比較的高い位置にあり、他の構造物もあることから走行中に石や木が飛び跳ねても容易にブレーキホースにぶつからない。また、走行中に異物がぶつかって破損した場合の傷は車体の前後方向に付くはずで、このホースの破断面は進行方向に対して直角であり、何かがぶつかってできたものではないと考えられる。

 今回のブレーキホースの破断は、表面の劣化がないこと、破断面がホースに対して直角にかつ断面がそろっており、これまでの経験から考えて、この破断は人為的に鋭利な刃物で切断されたと考えられる。

午後 証人尋問概要

 自動車やタイヤの構造等の専門家

一般的な自動車の前後輪のブレーキは前輪の効きが強くなるように造られており、制動効果の割合は前:後で2:1(前輪は後輪の約2倍の効き)と考えてよい。後輪のブレーキを強くするとスピンしやすくなるとのこと。そのため、今回のように後輪のブレーキホースが破断して働かなくなっても、自動車を停止させることは可能である。

破断面の写真をみると、刃物を前後させて羊羹などを切断した場合に見られる波上の切口が確認できることから刃物で切断したと考えられる。

傍聴して気になったこと

 弁護人質問の中で、『軽トラックの海中転落についての警察の取り調べ後の結論はブレーキホースの経年劣化により破断しブレーキが利かなくなったために起こった事故として処理された』との発言があった。だとすれば、警察は、海中転落後の軽トラックの破断面を見て、経年劣化によるものと判断したことになる。切断された軽トラックのブレーキホースの写真をみると、刃物で切断されたということは素人でもわかるものであり、この時の警察の判断には問題があったのではないのだろうか。かなり重大な問題である気がする。