第8回公判 2024/3/21(木)10:00~ 青森地方裁判所 第1法廷
傍聴人数27名(内記者席5名)
詐欺・放火・放火未遂 関連の冒頭陳述(検察、弁護側)
第9回公判 2024/3/25(月)10:00~ 青森地方裁判所 第1法廷
傍聴人数17名(内記者席3名)
午前検察による放火及び放火未遂に関する証拠説明、午後は弁護側の被告人質問
第10回公判 2024/3/26(火)10:00~ 第1法廷
傍聴人数17名(内記者席4名)
午前は検察側の被告人質問、午後は検察の被告人質問と裁判所からの被告人質問
第11回公判 2024/3/28(木)10:00~ 第1法廷
傍聴人数19名(内記者席5名)
詐欺・放火・放火未遂に関する中間論告
第8回~第11回と詐欺、放火関連の公判を通して見えてきた、藤崎町放火、三沢市放火、七戸町アパート放火未遂の概要をまとめます。
令和3年(2021年)
藤崎町Aさんの状況
3月17日、被告は藤崎町のAさんに対して実態の無いホイールローダーを販売し、その代金300万円をだまし取った。だまし取った300万円は事業の運転資金に使ってしまった。3月25日には同じ手口で実態の無い油圧ショベルとダンプを販売し、さらに230万円をだまし取った。当然、Aさんからは、重機の引き渡しを迫られ、最初は5月の連休までに引き渡すとしたが、輸送のトラブルなどを理由に引き渡さなかった。その後も引き渡しを迫られ、6月2日に引き渡す約束をしていた。
三沢市Bさんの状況
3月:被告は、廃業が決まっていた齊下産業から販売を依頼されていた10台の重機を、三沢市のBさんへ売り渡すことにし、Bさんから代金約1,000万円を受け取ったが、齊下産業には支払わず、被告の事業の運転資金として使ってしまった。また、購入したBさんへは3台の重機のみ引き渡し、残り7台の重機は無断で転売してしまった。Bさんからは7台の重機の引き渡しを何度も強く要求されていたが、輸送の都合や交通事情など理由をつけて納入を引き延ばしていた。
しかし、Bさんからの重機を確認したいとの強い要請に対して、5月29日に栃木に置いてあるとしていた重機(本当は実在しない)を二人で見に行くことになり、5月29日朝8時に三沢市にあるBさんが仕事で使っている車両置き場で落ち合う約束をした。
その後、5月29日朝にBさんの車両置き場に隣接する小屋が、6月1日夜遅くAさん宅が、そして、6月2日早朝に被告のアパートの隣家が火事になり、全て放火の可能性が高いとされた。
5月29日以降を時系列に沿って記載します。
5月29日
5:40 被告は、自宅を自家用車(caravan)で出発
七戸の自宅から待ち合わせ場所の三沢までは1時間もあれば着くので、待ち合わせ時間の8時に対して、出発した時間が非常に早い。これに対して被告は、これ以上ごまかし切れないと判断し、本当の事を告げて謝るために早く出発したと言っている。
6:13 被告は火災現場付近に到着。
被告の携帯位置情報から、被告は火災現場である車両置き場付近を行ったり来たりしていることがわかっている。
被告は、車両置き場付近を走行したが、車から降りていない、また火災にも気が付かなかったと証言している。
6:13 以降 Bさんの車両置き場に隣接する小屋で火災発生。
6:29 119番通報があった。
6:30前後 被告の携帯位置情報から被告はこの時間にも火災現場付近を走行していた。
被告は引き続き付近を走行しているが、火災には全く気が付かなかったと証言している。
6:38 消防の放水開始
6:40頃? 消防?らしい人からBさんへ非通知の電話があり、消火後に状況の聞き取りをしたいので10時?ごろ現場にいるように指示された。
→携帯の発信履歴からこの電話は、被告がBさんを栃木に行かせないようにするために嘘の指示をしたことが判明している。
6:44 被告は、Bさんへ電話し、今から待ち合わせ場所へ向かう旨告げた。Bさんは火災があり、消防から聞き取りがあるので待機するよう電話があったため時間どおりに栃木へは行けないとした。
→結局Bさんは現場で待っていたが、消防は来なかった。
10時以降? Bさんは被告に電話し、午後から栃木に行けると連絡したが、被告の都合でその日は中止とし、6月2日に行く約束をした。
(感想)火災発生直後の6:40頃 被告は消防を装いBさんに電話をかけ、事情聴取を理由にBさんが現場に留まるように仕向けている。また、この偽電話を掛けた時間が消防に通報があった直後(4分後)であり、現場にはいたが火災については全く気付いていなかったとしている被告の証言と大きく食い違う。が、この点について検察はあまり追及してこないように感じる。
6月1日
17:30 七戸の自宅から藤崎町のAさん宅へ向けて自家用車(caravan)で出発
6月2日に重機を引き渡す約束をしていた被告は、これ以上ごまかし切れないと判断し、本当のことを告げて謝るためにAさん宅に向かったと証言している。
21:14頃 藤崎町のAさん宅付近に到着、
~23:20 携帯位置情報から、21:14~23:20頃までAさん宅付近にいたことがわかっている。また、検察官は、被告が近くの中華料理店に駐車して、Aさん宅方面に歩いて近づいた形跡もあるもよう。
23:10 Aさん宅で縁側のカーテンが燃えているのを家族が発見。消火活動へ。家の窓枠などを焼いて消し止められた。
23:20 被告は、藤崎町Aさん宅付近から七戸町の自宅へ向けて出発
被告は、Aさん宅付近を走行していたことは認めた。被告は、謝罪のためにAさん宅に向かったが、結局本当のことを告げられないまま、Aさんに会わずに帰ってきてしまった。また、付近を走行しているときに火災や消防車のサイレン等火災に関することにはまったく気が付かなかったと証言した。
6月2日
00:12 七戸の自宅に帰る。重機の納入ができない状況で今後どうするか考えている間に朝になった。
6:10頃、被告が気分転換のために外にでた際、7号室の室外機付近の火災に気が付き、妻を起こし、大家へ連絡を入れた。
被告によると、灯油タンクから灯油が漏れており、被告は自分の車から手袋を出し、身に着けて灯油の漏れを止めるため、コックを絞めたり、灯油の漏れを止めるため配管を曲げることを試みたが、灯油の漏れを止めることはできなかった。この時、被告の妻は、火と向き合う被告の写真を撮っている。
6:15大家が消防に通報
6:23 消防が来て消火作業開始。
6:26 被告妻が火災の状況の写真撮影
6:28 三沢市のBさんへ電話し、自宅アパートが火災になり事後処理があるので、重機確認のための栃木行きを中止してもらった。
6:31 藤崎町Aさんに電話し、自宅アパートが火災になり事後処理があるので、重機引き渡しができない旨告げた。
6:33 消火
令和3(2021)年6月2日早朝、七戸町のアパート(まるよし荘)の7号室?が放火された。放火されたアパートの5号室には被告が入居していた。放火されたのは、7号室のエアコンの室外機が置かれていた脇で、8号室においてあった人工芝の玄関マットを移動して灯油を撒いて放火した可能性が高いようだ。火は消防に消し止められて、アパートの外壁の一部を焼き、エアコンの室外機の一部と配線が損傷した程度で済んだ。
焼けたエアコン室外機は長期間使用していない状態で、配線には電気系統が原因で火災になった場合に生じる短絡痕が見られず、エアコンが火元とは考えにくいとのこと。
着火実験では、人工芝の玄関マット単独の場合に火は広がらず、灯油をかけることで、何とか炎を上げて燃えるようになるが15分ほどで火勢は弱まってしまうらしい。
警察は、被告の実家の事務所を操作し、ネクター(ジュース)スクリュウ缶に灯油が入れられたものと被告自家用車からライターを押収した。
被告は、重機の運搬について運送業を営む義理の父に依頼することもあり、R3年春頃から輸送代金の未払い分凡そ50万円があり、金銭的に厳しい状況にあったようだ。その他にもオオワヤマさんへ30万円、社会保険料138万円、結婚披露宴代金150万円の未払いがあるなど、かなり金銭面で逼迫していたようだ。